2026年7月末、国土交通省が1本の通知を出しました。
建設コンサルタント業務で生成AIを使って成果をまとめる受注者に、「生成AI利活用計画書」を出してもらうよう求めるものです。AIを何に使い、何を入力し、出てきた答えの誤りをどう確かめるかを書いて、発注者に出す書類です。
私は橋梁と仮設構造物の施工管理を20年やっていて、現場の仕事でも毎日AIを使っています。この通知を知ったのは、毎週続けている業界ニュースのリサーチでした。読んで最初に考えたのは、「これは工事側にも来るのか」です。
答えから書きます。今の通知の対象は測量や設計などの業務で、工事は含まれていません。業務の中でも、計画書が要るのはAIの出力を報告書や設計成果に入れて発注者に出すときだけです。調べものやたたき台に使う程度なら要りません。
それでも、自分のAI利用3つを通知の基準で仕分けてみました。結果は3つとも対象外。ただし、一番気をつけるべき作業は、対象外の側にありました。
この記事でわかること
- 生成AI利活用計画書が要る場合と要らない場合の境界
- 施工管理者のAI利用3つを、実際に仕分けた結果
- 対象外でも外せない「入力情報」と「誤情報の検証」の中身

結論:生成AI利活用計画書が要るのは「成果物にAIを入れて出すとき」だけ
生成AI利活用計画書とは、生成AIを成果づくりに使う受注者が、目的・範囲・入力情報・リスク対策を書いて発注者に出す書類です。根拠は、国土交通省 大臣官房技術調査課が令和8年7月29日付で各地方整備局などに出した通知です。
一次資料:建設コンサルタント業務等における生成AI利活用等について(依頼)
計画書の要否を表1枚で整理する
| 項目 | 通知の内容 |
|---|---|
| 対象 | 測量、土木関係建設コンサルタント業務、地質調査業務(官庁営繕・港湾空港関係を除く)と、発注者が必要と認める業務 |
| 工事 | 対象として書かれていない |
| 適用 | 通知日以降に発注する業務に加え、手続き中・契約済みの業務も対応できるものから |
| 計画書が要る | 生成AIを用いた成果等をとりまとめる場合(報告書本文の生成、設計条件の整理・記述、発注者への提出書類など) |
| 作成指示が不要 | 法令・基準・文献の検索補助、検討資料のたたき台に留まる場合 |
| 不要でも書くこと | 業務計画書の行政情報流出防止対策に、生成AI利用のリスク対策を明示する |
線は「AIを使ったか」ではなく、「AIの出力が成果物に入るか」で引かれています。
特記仕様書の記載例は4条です。生成AIの取り扱い(協議と計画書)、情報漏洩リスク対策、成果物の留意点(第三者の権利と生成AI使用の明示)、機械可読性への配慮です。
Q:施工計画書をAIで書いたら、計画書は必要ですか? A:今の通知の対象は業務で、工事は含まれていません。 ただし業務側の線に当てはめると、AIの文章をそのまま提出書類に入れるかどうかが分かれ目になります。
背景:2026年に現場のルールが重なった
この通知は単独で出てきたわけではありません。国交省は2026年夏から、直轄土木工事で猛暑期間を休工できる工事の試行を始めました。3月には国交大臣と建設業4団体が、技能者の賃金をおおむね6%上げる目標で申し合わせています。2025年12月には改正建設業法が全面施行され、著しく低い労務費での見積りや契約が禁止されました。
休む日が増え、人件費は上がり、削る余地は減る。同じ仕事を少ない時間で回す道具として、AIを使わない選択は細くなります。使い方のルールが先に来たのは、その流れの中だと私は読んでいます。
自分のAI利用3つを生成AI利活用計画書の線で仕分けた

ここからが本題です。工事は対象外ですが、仮に同じ線が工事に引かれたらどうなるか。自分の実際のAI利用3つで試しました。
| AI利用 | 出力の行き先 | 通知の線 | 判断の重さ |
|---|---|---|---|
| 業務ログの記録 | 自分だけ | 対象外 | 軽い |
| 施工手順の文章生成 | 書き直して施工計画書へ | 対象外(たたき台) | 中くらい |
| 仮設備の概算重量 | 社内審査のための照査計算書 | 対象外(提出しない) | 重い |
3つとも線の外です。ただ、右端の列を見ると話が変わります。
業務ログ:外に出ないから対象外
毎日の業務ログを、AIで記録しています。誰にも提出しません。成果物に入らないので、計画書の話とは無関係です。
ここは迷いませんでした。ただし、ログには現場の情報が入ります。何を入力してよいかという問題は、提出しない作業にも残ります。
施工計画書の手順文:書き直すから「たたき台」
施工ステップを渡して、施工計画書に書く施工手順の文章をAIに生成させています。出てきた文章は、そのまま載せません。自分の言葉で書き直します。
通知の言葉でいえば、これは検討資料のたたき台です。たたき台を持ってAIに相談する使い方は、施工管理のAI活用は「叩き台」から始まるに実例を書きました。
逆に言えば、AIの文章をそのまま提出書類に入れたら、線の内側に入ります。線の内と外を分けているのは、書き直すという一手間です。
仮設備の概算重量:提出しないが、照査の判断根拠になる
仮設備の構造図をAIに渡し、設備の概算重量を出させました。出てきた数値は、部材の数量表で確かめ、おおむね合っていることを確認しています。
その重量を、設備が乗る軌条設備の照査計算書に記載しました。照査計算書は社内審査のための書類で、発注者には出しません。だから通知の線では対象外です。
それでも、3つの中でこれが一番重い。AIの数値が、構造の安全を確かめる計算の入力になっているからです。数値が違っていれば、照査は違った前提のまま通ります。
提出するかどうかと、判断の根拠に入るかどうかは、別の軸でした。計画書が要らない=検証が要らない、ではありません。
対象外でも、ひな形の2項目は自分に当てはまる
計画書のひな形は9項目です。①業務名、②受注者名、③利用目的、④利用予定範囲、⑤利用予定の生成AI、⑥入力情報の取扱い、⑦リスク対策、⑧発注者との協議内容、⑨その他(再委託先)。
一次資料:生成AI利活用計画書(ひな形)
このうち7項目は、受注者と発注者の手続きの話です。計画書を出さない私にも当てはまるのは、⑥と⑦の2つでした。
⑥入力情報:構造図を渡す前に決めること
ひな形の⑥は、個人情報を原則入力しないこと、入力データが学習されない措置の有無を問います。
構造図には、部材の形状と寸法のほかに、表題欄や位置の情報が入っています。概算重量を出すのに要るのは、部材の形状と寸法だけです。目的に要らない情報は、渡す前に消せます。
提出しない作業でも、入力の判断は同じです。外に出すかどうかと、AIに入れてよいかどうかも、別の軸です。
⑦誤情報の検証:数量表と照合する

ひな形の⑦は、誤情報や誤解誘導のリスクに対して、生成結果をどう検証するかを問います。
私がやったのは、AIの概算重量を部材の数量表と照らすことでした。検証とは、AIとは別の根拠で、同じ答えに近づくかを確かめることです。
正直に書くと、照合で分かるのは、桁が狂っていないことと大きな抜けがないことまでです。細かな誤差まで消せるわけではありません。どこまで合えば使うかは、その数値が判断にどれだけ効くかで決める必要があります。
工事はまだ対象外。だから今やる3つ
工事に同じ線が引かれるかは、まだ分かりません。ただ、自分の使い方を先に整えておけば、線が来ても書類を書くだけで済みます。
出力の「行き先」と「重さ」で仕分ける
AIを使う作業を書き出し、出力がどこへ行くかと、何の判断に使うかで分けます。
| 段階 | 出力の行き先 | 例 | やること |
|---|---|---|---|
| 1 | 自分だけ | 業務ログ | 入力情報だけ決める |
| 2 | 書き直して使う | 施工手順の文章 | 書き直しを省かない |
| 3 | 判断の根拠に入る | 照査に使う数値 | 別の根拠で照合し、照合方法を残す |
| 4 | 発注者に出す | 報告書・提出書類 | 業務なら計画書の対象になる |
段階3が、通知の線の外にある一番重い場所です。
図面を渡す前に、消す情報を決める
- その作業でAIに求める答えを1行で書く
- 答えに要る情報だけを残す(形状・寸法・条件)
- 表題欄、名称、位置の情報を消す
- 会社の生成AI利用ルールで、使えるサービスと入力範囲を確かめる
AIの数値は、別の根拠で照合してから使う
- AIの数値と同じ量を、数量表や手計算など別の根拠で出す
- 差が出たら、どちらが何を拾い落としたかを確かめる
- 照合に使った根拠を、計算書の側にも1行残す
3つ目が、後から自分を守ります。社内審査で「この重量の根拠は」と聞かれたとき、AIと数量表の両方を示せます。

まとめ:線の内側かどうかと、検証の要否は別
- 生成AI利活用計画書が要るのは、AIの出力を成果物に入れて発注者に出すとき
- 工事は、今の通知の対象に書かれていない
- 私のAI利用3つは全部対象外。ただし照査の根拠に入った数値が一番重い
- 対象外でも、ひな形の⑥入力情報と⑦誤情報の検証は自分に当てはまる
- 今やるのは、仕分け、入力の削り、別根拠での照合の3つ
通知は、成果物の機械可読性まで求めています。発注者側も成果をAIで読む前提に立っているということです。施工の書類に同じ流れが来るかは分かりませんが、私は来ると見ています。線が引かれてから慌てるより、今の使い方に自分で線を引いておく方が早い。
まずは、自分がAIを使っている作業を3つ書き出して、行き先と重さで仕分けてみてください。一番重い作業が、線の外にあるかもしれません。
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